逃亡せよ


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ただただ空虚にナイフを向けていてもしょうがない。動き続けていないと奇跡は起きないのだ。つまらないなんて言ってる間に熱くなって飛び回ればいいじゃないか。

そして行く、初めての大阪に、そして大好きな京都に。ホテルなんてとらない。野良犬みたいにほっつき歩くのだ。さあ旅に出ろ。

先に京都で降り、樋口ヒロユキがキュレーションしたアート展へ行く。出町柳から歩いていく。天気が悪かったので気分満開というわけではなかったが、京都にいるというだけで嬉しくなる。絶対に移住したいと思いつつ年月ばかり経ってしまったが、やはり諦めるのは早いと、思いを新たにする。

そして大阪に向かい、Twitterで知り合った人の元へ行く。今までのやりとりから、話すテーマは文学やアート、音楽にジェンダーセクシャルマイノリティー、仕事に結婚に子供、そして愛について。つまりは全部だ。人生においての優先順位が高いものばかり。僕のにわか知識で大丈夫だろうか、相手を退屈させないだろうかと思いビビっていたが、いざ会ってみたらすごく楽しい夜だった。

そして驚いた。話が合う。たくさんの固有名詞を知っている。自分が知らない話にも別の角度から質問をしてくれて、一つの話題から枝葉が伸びてゆく。よくある、ふーんそれあたししらなーい、でタバコをぷか〜、なんてことはないのだ。感覚でうまく説明できないことも、自分なりの言い換えを差し出してくれる。そしてそちらのほうが、説明したかった自分の感情に近かったりした。まるで憑き物を落とすかのように言葉のシャワーを浴びせ合う。時の流れを追い越すようなスピードで。いつも独りで悶々と考え、答えが出なかったことが、同じ文脈で語り合える相手がいるだけでするッと次のステップに進める。驚きと発見、そして感謝だ。

そして2日目は京都へ。でもその前に大阪の街をほっつき歩く。僕の旅行ってはたから見るとつまらない。名所や名店に積極的に赴くわけでなく、ただやみくもに街中を歩くのだ。そして全体の空気感をつかむだけ。街全体を眺め、市井の人々の会話に耳をそばだてる。

そして午後は京都に行く。またほっき歩くのだ。2ブロックなんて当たり前。京都駅から二条くらいまでなら全然へいちゃらだ。そして碁盤の目に沿って曲がったり、気まぐれに直進したりしながら進む。興味がわいた店に入り、また次、その次と繰り返す。イノダ珈琲で休憩。そこでiPhoneをうまく操作できない母娘の旅行者が使い方おせーてよときたので操作方法を伝える。少し離れた後ろの席で、あー間違えた!押しちゃった!なんていう声がしたと思ったら、あのー度々すいませんと聞いてきたので、列車のチケット予約を途中まで操作してあげる。でも母娘の旅行っていいな。僕は男だから父息子となるのだろうが気持ち悪くて行く気しない。30分も持たない。もし一日親父と旅行するか激しい工事現場でただ働きするかの選択しかなかったら迷わずに工事現場を選ぶ。そして彼女への土産でカップを買い、最安のビジネスホテルにチェックインしたらもう夕方、ご飯の時間だ。

一人旅で一番困るのは食事である。旅先で高揚している気分をさらに増幅させる為に酒を飲みたいがなんせ一人だ。これが恋人や友人と一緒なら、彼らの好きなジャンルの店に行って、旅の印象などを語らいながら僕はひたすら飲んでいればいいのだが、一人だとそうはいかない。店もそうだし、話し相手もいないのだから。自分で6時間分のプレゼンをしなければならない。

ということでまた、この脚に活躍してもらうのだ。さっきとは違うエリアに行き、鴨川沿いのカップルに割って入ったりしながら、先斗町木屋町河原町を中心に回り、それでも一人で入れるいい感じの店がないので今度は烏丸方面、そして大宮まで下る。しかし店は無く、やはり調べておくべきだったか・・・と思いホテルに戻ろうとしたら良い感じのアイリッシュパブを発見して、それがホテルから2分の所で灯台下暗し。京野菜湯葉、やわらかい味つけに日本酒とはあまりにも遠い。レッドホットチキン3ピース、みたいな。それをギネスで流し込む、みたいな。案の定ビールを飲みまくり、思考が溶けていき、足下はふらつく。もう一度鴨川まで散歩に行こうと思ったが、酔った勢いでいちゃつくカップル達にバーカバーカなんて言ってしまいそうなので止めた。次回は店を決めてこようよ、君はいつまでも若くはないのだからという天の声。

そして3日目は本格的に京都散策。天気はばっちり、快晴。前日2時間しか寝てないのがウソみたいに元気だ。空気は冷たく陽射しは柔らかいという絶好の気候にテンションが上がる。やはり本好きとしては恵文社に行っておかねばと思い出向く。ホテルのある四条烏丸から歩いて早朝の鴨川へ。時間はまだ8時前。水面は穏やか、水の粒は光を反射、大きな伸びと深呼吸を自然としてしまう。爽やかという言葉しか見つからない。

そして大阪で飲んだ人たちから、京都に行くよ!との連絡が入ったので時間まで喫茶店へ。朝イチだからチェーン店しか開いてないのが悲しい。じゃあ時間までノートの整理やブログの下書きでもしようかと思いiPhoneを取り出すが、画面が真っ暗なまま何も反応しない。おかしいと思い、いろいろいじるが反応無し。嫌な汗が滲み、さっきの爽やかさはどこかへ行ってしまった。電源はもちろん、いろんなボタンを様々な組み合わせで押したりしてもダメだった。SIMカードだ!と思ってようじを使ってSIMを抜き差しするも反応なし。バッテリーケースを外しても、水のグラスを使って冷やしても変わらない、しまいにはう・ご・けぇぇぇぇぇぇと念じながら上下左右にシェイクする始末。どーしよう、待ち合わせできない。連絡先は携帯の中だけだ。バカッ、俺のバカ、なぜメモっておかないのだ。念には念をだろ?だから詰めが甘いんだよいつも。自分に対する呪詛の言葉しか出てこない。はい、しゅーりょーっ!というホイッスルが鳴り、うなだれてトイレに行き、石鹸を使って潔癖性かお前くらいの勢いでなぜか手を洗い、戻ってメインのボタンを押したら、ハイッ拷問タイム終了!とばかりにパッと明るくなる。チビりそうとはまさにこのこと。1時間のM男体験。

恵文社はさすがの品揃えで、その空間には独特の雰囲気を宿していた。棚が低く全体を見渡せるだけでどうしてこんなに開放感があるのか。ジャンルに縛られない陳列。僕の好きなシュルレアリスム関係書はかなり充実していて、私家版の冊子も多数ある。雑貨、アクセ、文具、キッチン、それぞれのボリュームも良い感じ。つまりは一日中いても飽きないということだ。住み着きたい、ここに。

待ち合わせもできて、のち嵐山方面を案内してもらったり、僕のTwitterネームに似たブックカフェに連れていってくれたりで充実の一日。一人だったらまたひたすら歩き回ることとなっただろう。

前回の下田に続き今回の逃亡も大成功なのでした。


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